歯科コラム

COLUMN

ホワイトニングは1回で白くなるのか
ホワイトニングについて

ホワイトニングをすれば、たった1回で歯が真っ白になる!そう期待している方もいらっしゃるかもしれません。テレビCMSNSなどで見かける、劇的に歯が白くなった症例写真を見ると、そう思うのも無理はありません。しかし、ホワイトニングの効果は、患者様一人ひとりの歯の状態や、選ぶホワイトニングの種類によって大きく異なります。特に、「1回でどこまで白くなるのか」という疑問は、ホワイトニングを検討している多くの方が抱くことでしょう。ホワイトニングが歯を白くする基本的な仕組みから、効果に影響を与える様々な要因、そして1回の施術で期待できる変化の度合い、さらには白さを長持ちさせるためのアフターケアについてご説明させていただきます。

ホワイトニングの基本的な仕組み

ホワイトニングは、歯の表面に付着した着色汚れを取り除くだけでなく、歯そのものの色を化学的に白くしていく治療です。この仕組みを理解することが、1回の施術で得られる効果や、ホワイトニング後の注意点を把握する上で重要になります。

歯の表面にあるエナメル質は、ミクロな穴が多数開いた構造をしています。コーヒー、紅茶、ワインなどの色素や、加齢による影響で、これらの穴の中に色素が入り込み、歯が黄ばんで見えます。ホワイトニングで使用する薬剤の主成分は、過酸化水素過酸化尿素です。これらの薬剤が歯の表面に塗布されると、成分が歯の内部に浸透し、色素を分解する働きをします。

具体的には、色素を構成している分子の二重結合を切断し、色素を無色透明な状態に変化させます。同時に、エナメル質の構造をわずかに変化させ、光の乱反射効果を高めることで、歯がより白く、輝いて見えるようになります。例えるなら、黄ばんだカーテンを漂白剤で洗うようなイメージです。汚れを落とすだけでなく、繊維そのものの色を明るくしていく作用があるのです。

歯科医院で行うオフィスホワイトニングでは、高濃度の薬剤を使用し、特殊な光を照射することで、この化学反応を促進させ、短時間で効果を実感しやすくなります。一方、ご自宅で行うホームホワイトニングは、低濃度の薬剤を時間をかけて作用させることで、じっくりと歯を白くしていきます。どちらの方法も、歯そのものの色を明るくするという点で共通しています。

ホワイトニングの効果に影響する要因

ホワイトニングの効果は、患者様一人ひとりの口腔内の状態や生活習慣によって大きく異なります。全ての方が同じように白くなるわけではないことをご理解いただくことが大切です。効果に影響を与える主な要因は以下の通りです。

  • 歯の質と元の色
    歯の質は人それぞれ異なり、エナメル質(歯の表面の層)の厚さや透明度、象牙質(エナメル質の内側の層)の色味が、歯の元の色を左右します。 元々歯が黄色みが強い方や、歯が薄い方は、白さの到達点に限界がある場合があります。また、加齢によって象牙質の色が濃くなるため、年齢が高い方は若い方よりも白くなりにくい傾向があります。
  • 着色の原因
    コーヒー、紅茶、ワイン、カレーなどの色素による着色(外因性着色)は、比較的ホワイトニングの効果が出やすいです。 しかし、テトラサイクリン系の抗生物質による歯の変色(内因性着色)や、神経が死んでしまった歯の変色など、歯の内部からの着色には、通常のホワイトニングでは効果が限定的であったり、別の治療法が必要になったりする場合があります。
  • ホワイトニングの種類と薬剤の濃度
    歯科医院で行うオフィスホワイトニングは、高濃度の薬剤を使用し、光を照射することで短期間で効果を実感しやすい特徴があります。 ご自宅で行うホームホワイトニングは、低濃度の薬剤をマウスピースに入れて長時間作用させることで、じっくりと歯を白くしていきます。 どちらの方法を選ぶか、また使用する薬剤の濃度によっても、得られる白さの度合いや期間は変わってきます。
  • 生活習慣
    喫煙習慣がある方や、色の濃い飲食物(コーヒー、紅茶、ワイン、カレーなど)を頻繁に摂取する方は、再着色しやすく、白さの維持が難しい場合があります。 ホワイトニング後の食生活や口腔ケアも、効果の持続に大きく影響します。
  • 個人の感覚と期待値
    「どのくらい白くなれば満足か」という白さの基準は、人それぞれ異なります。過度な期待は、結果に対する不満につながることもあります。 歯科医院では、シェードガイド(歯の色見本)を使って、現在の歯の色と目標とする白さの度合いを事前に確認し、現実的な目標を設定することが大切です。

これらの要因を考慮し、ご自身の歯の状態に合わせた最適なホワイトニングプランを歯科医師と相談することが、理想の白さに近づくための第一歩となります。

1回のホワイトニングで得られる効果

「ホワイトニングは1回で白くなるのか?」という疑問に対する答えは、「個人差はあるものの、1回でもある程度の白さの変化は期待できるが、理想の白さに到達するには複数回の施術が必要なことが多い」というものです。

特に歯科医院で行うオフィスホワイトニングは、高濃度の薬剤と専用の光を使用するため、1回の施術でその効果を実感しやすい特徴があります。施術直後から歯のトーンが明るくなったと感じる方は多く、シェードガイド(歯の色見本)で見ると、2~4段階程度の白さの向上が見られることも珍しくありません

しかし、以下のような要因によって、1回での効果の出方には違いがあります。

  • 歯の元の色調
    元々かなり黄ばみが強い歯の場合、1回で劇的に白くなることは稀です。何度か回数を重ねることで、徐々に理想の白さに近づいていきます。
  • 着色の原因
    コーヒーや紅茶などの表面的な着色には効果が出やすいですが、歯の内部からの変色(テトラサイクリン歯など)には、1回ではほとんど効果が見られないこともあります。
  • エナメル質の厚さや密度
    エナメル質が厚く、密度が高い歯は薬剤が浸透しやすく、効果が出やすい傾向があります。逆に、エナメル質が薄い歯や、知覚過敏がある歯は、効果の出方が穏やかになることがあります。
  • 期待する白さのレベル
    「少しでも白くなれば満足」という方もいれば、「芸能人のように真っ白にしたい」という方もいます。期待値が高ければ高いほど、1回では物足りなく感じるかもしれません。

ホームホワイトニングの場合、オフィスホワイトニングよりも低濃度の薬剤を使用するため、1回あたりの効果は緩やかです。しかし、毎日継続して行うことで、オフィスホワイトニングとは異なる、じっくりと深みのある白さを得られるメリットがあります。

いずれにしても、1回のホワイトニングで得られる効果は「白さのスタートライン」であり、最終的な理想の白さに到達するためには、複数回のオフィスホワイトニングを重ねたり、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを組み合わせたりすることが推奨されます歯科医師と相談し、ご自身の目標とする白さと、それに対する現実的な回数や期間について理解を深めることが大切です。

ホワイトニング後のケア

ホワイトニングで歯が白くなった後も、その白さをできるだけ長く維持するためには、適切なアフターケアが非常に重要です。せっかく手に入れた白い歯も、ケアを怠ると徐々に色が戻ってしまうことがあります。

  • 着色しやすい飲食物への注意
    ホワイトニング直後の歯は、表面のミクロな穴が一時的に開いた状態になっており、色素を吸収しやすくなっています。このため、施術後24時間〜48時間は、特に色の濃い飲食物(コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレー、チョコレート、醤油など)や、酸性の強い飲食物(柑橘類、炭酸飲料など)の摂取を控えましょう。 喫煙も歯の着色を促進するため、控えるのが望ましいです。 どうしても色の濃いものを摂取する場合は、ストローを使ったり、食後すぐに水で口をゆすいだり、歯磨きをしたりすることで、着色を最小限に抑えることができます。
  • 毎日の丁寧な歯磨き
    白さを維持するためには、毎日の丁寧な歯磨きが基本です。色素が歯の表面に付着するのを防ぐため、ホワイトニング効果のある歯磨き粉を使用するのも良いでしょう。ただし、研磨剤が多く含まれているものは、歯を傷つける可能性があるので注意が必要です。 歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを使い、歯と歯の間の汚れもしっかりと除去しましょう。
  • 定期的な歯科検診とクリーニング
    ご自身の歯磨きだけでは落としきれない、頑固な着色汚れや歯垢は、時間の経過とともに蓄積していきます。 定期的に歯科医院でプロフェッショナルクリーニング(PMTCなど)を受けることで、これらの汚れを除去し、歯の表面をツルツルに保つことができます。これにより、色素の再付着を防ぎ、ホワイトニング効果を長持ちさせることができます。 定期検診では、歯科医師や歯科衛生士が歯の状態をチェックし、必要に応じてタッチアップ(追加のホワイトニング)のタイミングなどをアドバイスすることもできます。
  • ホームホワイトニングの継続
    オフィスホワイトニングで目標の白さに到達した後も、定期的にホームホワイトニングを行うことで、白さを維持しやすくなります。ホームホワイトニングは、ご自宅で手軽にできるため、白さの「メンテナンス」として非常に有効です。

これらのケアを継続することで、ホワイトニングで得た白い歯を長く保ち、自信のある笑顔を維持することができるでしょう。

最後に

「ホワイトニングは1回で白くなるのか」という疑問は、多くの方が抱くものです。結論として、1回のホワイトニングである程度の白さの変化は期待できますが、理想とする白さに到達するには、多くの場合、複数回の施術が必要となることが多いです。

ホワイトニングは、歯の表面の着色汚れを落とすだけでなく、薬剤が歯の内部に浸透し、色素を化学的に分解することで歯そのものの色を明るくします。この効果の出方には、歯の元の色調、着色の原因、ホワイトニングの種類や薬剤濃度、そして患者様の生活習慣など、様々な要因が影響します。

特に歯科医院で行うオフィスホワイトニングは、1回の施術で白さの実感をしやすいですが、ホームホワイトニングはじっくりと白くしていく特徴があります。理想の白さを目指すには、これらを組み合わせることも有効です。

ホワイトニングで手に入れた白さを長持ちさせるためには、施術後の適切なケアが不可欠です。色の濃い飲食物への注意、毎日の丁寧な歯磨き、そして最も重要なのが定期的な歯科検診とプロフェッショナルクリーニングです。これにより、再着色を防ぎ、インプラント周囲炎などのトラブルも早期に発見・対処できます。

ホワイトニングは、美しい笑顔と自信を取り戻すための有効な手段です。ご自身の歯の状態を理解し、歯科医師と相談しながら、最適なプランで理想の白さを目指しましょう。

当記事の監修editor

院長 宍戸孝太郎
医療法人社団 孝親会 理事長
宍戸 孝太郎
資格・所属学会
厚生労働省認定歯科医師臨床研修医指導医
SBC(Surgical Basic Course 歯周形成外科コース)インストラクター
SAC講師
club SBC
日本口腔インプラント学会認定医
日本口腔外科学会会員