歯科コラム

COLUMN

お子さんの歯ブラシの選び方
お子様の治療予防ケアについて

お子さんの歯磨きは、むし歯予防の第一歩であり、健やかな成長にとって非常に大切な習慣です。しかし、小さなお子さんの歯はデリケートで、大人とは異なる特徴があります。市販されている歯ブラシの種類も豊富で、「どれを選んだらいいの?」と迷ってしまう保護者の方も多いのではないでしょうか。お子さんの成長段階に合わせた適切な歯ブラシを選ぶことは、毎日の歯磨きを効果的かつ楽しく続けるために不可欠です。

 

お子さんの歯ブラシを選ぶ際は、単にキャラクターデザインや色で決めるのではなく、年齢や歯の生え方に合わせて選ぶことが非常に重要です。成長段階に応じた適切な歯ブラシを選ぶことで、効果的な歯磨きができ、お子さん自身も快適に歯磨きを続けやすくなります。

ここでは、年齢別の歯ブラシ選びのポイントをご紹介します。

  • 乳歯が生え始めたばかり(生後6ヶ月頃~1歳半頃):
    • ヘッドの大きさ: 小さな口に合わせた、非常に小さいヘッドを選びましょう。奥歯まで届きやすいサイズが理想です。
    • 毛の硬さ: やわらかめ~超やわらかめの毛を選んでください。デリケートな乳歯や歯茎を傷つけないことが最優先です。
    • 柄の形状: 保護者の方が持ちやすい、太くて短い柄がおすすめです。滑りにくいグリップがあると、より安定して磨けます。この時期は「慣れること」が大切なので、歯磨きを楽しい時間にする工夫も必要です。
  • 乳歯がほぼ生え揃った頃(1歳半頃~3歳頃):
    • ヘッドの大きさ: 乳歯列全体をカバーできる、少し大きめのヘッド(ただし、まだ小さいもの)を選びます。奥歯の溝や歯と歯の隙間にも届くような形状が望ましいです。
    • 毛の硬さ: 引き続きやわらかめを選びます。この時期は自分で磨く練習も始まるので、歯茎への負担を考慮しましょう。
    • 柄の形状: お子さん自身が持ちやすく、保護者も仕上げ磨きしやすい、やや太めのストレートな柄が良いでしょう。
  • 混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期、6歳頃~12歳頃):
    • ヘッドの大きさ: 永久歯が生え始めるため、乳歯よりも少し大きめのヘッドを選びますが、奥歯の裏側や前歯の裏側など、磨きにくい部分にも届くコンパクトな形状が適しています。
    • 毛の硬さ: ふつう~やわらかめを選びます。歯茎の状態に合わせて調整しましょう。
    • 柄の形状: お子さんが自分でしっかり握れる、持ちやすい長さと太さのものが良いです。この時期は、永久歯の生え始めや、歯並びの変化など、口腔内の状態が複雑になるため、歯ブラシの種類を複数使い分けることも検討すると良いでしょう。

さらに、電動歯ブラシを検討する保護者の方もいらっしゃるかもしれません。電動歯ブラシは効率的に汚れを落とせるメリットがありますが、お子さんの年齢や歯磨きの習熟度に合わせて選び、正しい使い方を学ぶことが大切です。迷った場合は、歯科医院で相談し、お子さんに合った歯ブラシを選んでもらうことをお勧めします。

歯ブラシを嫌がる時はどうしたらいいのか?

お子さんが歯ブラシを嫌がると、毎日の歯磨きが保護者の方にとって大きなストレスになりますよね。しかし、無理強いは逆効果になることもあります。お子さんが歯磨きを嫌がる原因を理解し、工夫を凝らすことで、歯磨きの時間を楽しいものに変えていきましょう。

考えられる原因と対策は以下の通りです。

  • 「痛い」「くすぐったい」と感じる場合:
    • 原因: 歯ブラシの毛が硬すぎる、力の入れすぎ、歯茎に強く当たっている、知覚過敏があるなどが考えられます。
    • 対策: やわらかめの歯ブラシを選び、力を入れずに優しく磨いているか確認しましょう。歯茎の炎症や知覚過敏がある場合は、一度歯科医院で診てもらうことをおすすめします。
  • 「怖い」「嫌なもの」というイメージがある場合:
    • 原因: 過去に歯磨きで痛い経験をした、保護者が怖い顔で磨いている、歯磨き=怒られる時間になっているなどが考えられます。
    • 対策: 歯磨きの時間を楽しい雰囲気にしましょう。
      • お気に入りのキャラクターの歯ブラシを使う。
      • 好きな歌を歌いながら磨く、手遊び歌を取り入れる。
      • 保護者も一緒に歯磨きをする姿を見せる。
      • 「磨き終わったら褒めてあげる」など、ご褒美を用意する。
      • いきなり口に歯ブラシを入れるのではなく、まずは歯ブラシで遊ばせたり、おもちゃの歯を磨く練習をさせたりする。
  • 磨く姿勢や体勢が不快な場合:
    • 原因: 寝かせ磨きが嫌い、体勢が苦しい、口を開け続けるのがつらいなどが考えられます。
    • 対策: お子さんが楽な姿勢で磨ける方法を見つけましょう。
      • 膝の上に寝かせたり、抱っこしたり、鏡の前で一緒に立って磨いたり、色々な体勢を試してみる。
      • 短時間で区切って磨く、タイマーを使って時間を意識させる。
  • 「自分でやりたい」という自立心が芽生えた場合:
    • 原因: 自分でやりたい気持ちが強いのに、保護者が全てやってしまうと反発する。
    • 対策: 「自分で磨く時間」と「仕上げ磨きの時間」を区別しましょう。
      • まずは自分で好きなように歯ブラシを持たせて磨かせ、「自分でできた」という達成感を持たせる。
      • その後に「仕上げはお父さん(お母さん)にさせてね」と声をかけ、丁寧に仕上げ磨きをする。この時、「ここを磨くと虫歯バイキンがいなくなるよ」など、分かりやすい言葉で説明しながら行うのも良いでしょう。

歯磨きは毎日のことなので、焦らず、根気強く続けることが大切です。お子さんの気持ちに寄り添いながら、少しずつ歯磨きを習慣化できるよう工夫していきましょう。どうしても難しい場合は、歯科医院で歯科衛生士に相談し、専門的なアドバイスをもらうこともできます。

仕上げ磨きのポイント

お子さんの歯磨きにおいて、保護者の方による仕上げ磨きは非常に重要です。お子さん自身が上手に歯磨きできるようになるまでは、仕上げ磨きで磨き残しをなくし、むし歯から歯を守る必要があります。特に、乳歯や生え始めの永久歯はエナメル質が未熟で、むし歯になりやすいため、丁寧な仕上げ磨きが求められます。

ここでは、仕上げ磨きのポイントをご紹介します。

  1. お子さんの体勢と保護者の姿勢
    お子さんが嫌がらず、かつ保護者が磨きやすい体勢を見つけましょう。膝に寝かせたり、抱っこしたり、鏡の前で一緒に立ったりするなど、様々試してみてください。
    保護者の方は、お子さんの口の中がよく見えるように、少し上から覗き込むような姿勢がおすすめです。
  2. 歯ブラシの持ち方と力の入れ方
    歯ブラシは、鉛筆を持つように「ペングリップ」で持ちましょう。こうすることで、余分な力が入らず、優しく細かい動きで磨けます。
    力の入れすぎは歯茎を傷つけたり、歯を摩耗させたりする原因になります。歯ブラシの毛先が軽く歯に触れる程度の「ソフトタッチ」を意識しましょう。
  3. 磨く順番とポイント
    磨き残しがないように、必ず決まった順番で磨く習慣をつけましょう。例えば、「上の奥歯の外側から」「下の奥歯の内側から」など、ルーティンを決めておくのがおすすめです。
    磨くべき重点ポイント
    奥歯の噛む面: 溝が深く、食べ物が残りやすい部分です。
    歯と歯茎の境目: むし歯や歯周病になりやすい場所です。毛先を歯と歯茎の間に45度くらいの角度で入れ、優しく小刻みに動かしましょう。
    歯と歯の間: 歯ブラシだけでは届きにくいので、デンタルフロスや歯間ブラシを併用しましょう。
    奥歯のさらに奥(一番奥の歯の後ろ側): 見落としやすい場所です。
    生え始めの歯: 歯茎から顔を出し始めたばかりの歯は、歯ブラシが当たりにくく、むし歯になりやすいので特に注意が必要です。
  4. フッ素入り歯磨き粉の活用
    フッ素は歯質を強くし、むし歯菌の活動を抑える効果があります。お子さんの年齢に合わせたフッ素濃度の歯磨き粉を使用し、適量を守って使いましょう。
    歯磨き粉は少量で十分です。うがいができない乳幼児期は、歯磨き後、濡らしたガーゼで軽く拭き取る程度で大丈夫です。
  5. 褒めてあげること
    歯磨きが終わったら、「よく頑張ったね!」「ピカピカになったね!」とたくさん褒めてあげましょう。歯磨きに対する良いイメージを持たせることが、継続に繋がります。

仕上げ磨きは、お子さんのむし歯予防の要です。毎日欠かさず、愛情を込めて行ってあげましょう。

歯科医院で行うお子さんの歯のケア

ご家庭での毎日の歯磨きや仕上げ磨きは非常に大切ですが、それだけでは防ぎきれないむし歯や、気づきにくいお口のトラブルもあります。そこで重要になるのが、歯科医院で定期的に行うお子さんの歯のケアです。ししどデンタルケア稲田堤駅前では、お子さんの成長段階に応じた専門的なケアを提供し、健やかなお口の育成をサポートしています。

歯科医院で行うお子さんの歯のケアの主な内容は以下の通りです。

  • 定期検診(プロフェッショナルケア)
    お子さんの歯の状態、歯茎の健康、噛み合わせ、歯並びなどを定期的にチェックします。むし歯や歯肉炎の兆候がないか、歯の生え方に問題がないかなどを専門家の目で確認します。
    ご家庭での歯磨きでは落としきれない、歯の表面に付着したプラーク(歯垢)や歯石を専用の器具で徹底的に除去します。これにより、むし歯や歯周病のリスクを大幅に減らすことができます。
    お子さんの年齢や歯磨きの習熟度に合わせて、より効果的なブラッシング方法やフロス、歯間ブラシの使い方などを具体的にアドバイスします。
  • フッ素塗布
    フッ素は、歯の質を強くし、むし歯菌の活動を抑制する効果があります。特に、生え始めの永久歯はフッ素を取り込みやすいため、むし歯予防に非常に効果的です。
    歯科医院で塗布するフッ素は、ご家庭で使う歯磨き粉よりも高濃度であり、より高い予防効果が期待できます。定期的にフッ素塗布を行うことで、むし歯に強い歯を育てます。
  • シーラント(奥歯の溝の埋め込み)
    奥歯の噛む面には、深く複雑な溝があり、歯ブラシの毛先が届きにくいため、むし歯になりやすい場所です。
    シーラントは、この溝を歯科用のレジン(樹脂)で埋め、細菌が入り込むのを防ぐむし歯予防処置です。特に永久歯の奥歯が生え始めたばかりのお子さんにおすすめです。
  • 噛み合わせ・歯並びのチェック
    乳歯の時期や混合歯列期に、噛み合わせや歯並びに異常がないかを確認します。将来的な歯並びの問題を早期に発見し、必要であれば適切な時期に矯正相談を提案することもあります。

これらの専門的なケアを定期的に受けることで、お子さんの歯をむし歯から守り、健康な永久歯列の完成をサポートすることができます。お子さんの健やかな成長のために、かかりつけの歯科医院を持つことが大切です。

最後に

お子さんの歯磨きは、むし歯予防の基本であり、健やかな成長にとって欠かせない習慣です。その第一歩となるのが、お子さんの成長段階に合わせた適切な歯ブラシを選ぶことです。乳歯が生え始めたばかりの時期にはやわらかめの小さなヘッド、乳歯が揃ったら少し大きめのヘッド、そして乳歯と永久歯が混在する混合歯列期には、磨きにくい部分にも届くコンパクトな形状を選ぶのがポイントです。

しかし、お子さんが歯ブラシを嫌がることもあります。その際は、痛みの有無を確認し、歯磨きの時間を楽しい雰囲気に変える工夫をしたり、お子さんの「自分でやりたい」という気持ちを尊重しながら「自分で磨く時間」と「仕上げ磨きの時間」を分けたりすることが大切です。

そして、保護者の方による仕上げ磨きは、お子さんのむし歯予防の要です。歯ブラシを「ペングリップ」で優しく持ち、奥歯の噛む面や歯と歯茎の境目、生え始めの歯など、むし歯になりやすいポイントを意識して丁寧に磨きましょう。フッ素入り歯磨き粉の活用も有効です。

ご家庭でのケアに加えて、歯科医院での定期的なケアも非常に重要です。専門的なクリーニングで磨き残しを除去し、フッ素塗布やシーラントでむし歯に強い歯を育てること、そして噛み合わせや歯並びのチェックを通じて、お子さんの健やかなお口の成長をサポートできます。

お子さんの大切な歯を守るために、ご家庭でのケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアを両立させ、楽しく歯磨き習慣を続けていきましょう。

当記事の監修editor

院長 宍戸孝太郎
医療法人社団 孝親会 理事長
宍戸 孝太郎
資格・所属学会
厚生労働省認定歯科医師臨床研修医指導医
SBC(Surgical Basic Course 歯周形成外科コース)インストラクター
SAC講師
club SBC
日本口腔インプラント学会認定医
日本口腔外科学会会員