歯科コラム

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マウスピース矯正を行なっても後戻りしてしまう?
マウスピース矯正

マウスピース矯正を検討中の皆様へ

歯並びをきれいにしたいと考えている方にとって、マウスピース矯正は「目立たない」「取り外しができる」といった理由から、魅力的な選択肢の一つです。しかし、矯正治療には「後戻り」というリスクがあることをご存知でしょうか。せっかく時間とお金をかけて歯並びを整えても、元の状態に戻ってしまっては意味がありません。この「後戻り」は、マウスピース矯正だけでなく、ワイヤー矯正でも起こりうる現象です。後戻りの原因や、後戻りを防ぐための保定装置の重要性、万が一後戻りしてしまった場合の対処法をまとめました。

 

マウスピース矯正の特徴

マウスピース矯正とは、透明なプラスチック製のマウスピースを段階的に交換していくことで、少しずつ歯を動かしていく矯正治療の方法です。従来のワイヤー矯正のように金属のブラケットやワイヤーを使用しないため、見た目が気になりにくいという点が大きな特徴です。

主な特徴は以下の通りです。

  • 目立ちにくい: 透明なマウスピースは、装着していても他人にほとんど気づかれません。
  • 取り外しが可能: 食事や歯磨きの際にはご自身で取り外せるため、普段通りの生活を送ることができます。また、装置を清潔に保ちやすいため、虫歯や歯周病のリスクを低く抑えられます。
  • 不快感が少ない: ワイヤーやブラケットがないため、口内炎ができたり、粘膜を傷つけたりするリスクが少ないです。
  • 高い装着時間が必要: 矯正効果を得るためには、120時間以上マウスピースを装着する必要があります。装着時間を守れないと、治療期間が延びたり、計画通りに歯が動かなくなったりする可能性があります。
  • 軽度から中等度の症例に有効: 複雑な歯並びや、骨格のずれが大きい症例など、マウスピース矯正だけでは治療が難しい場合があります。

このように、マウスピース矯正はメリットが多い一方で、患者様ご自身の協力が不可欠な治療法といえます。

後戻りとは?

矯正治療における「後戻り」とは、歯が元の位置に戻ろうとする現象を指します。せっかく時間と費用をかけてきれいに並べた歯が、治療前の状態に少しずつ戻ってしまうことを言います。この現象は、矯正治療を終えたすべての方に起こりうるリスクであり、マウスピース矯正やワイヤー矯正といった治療方法に関わらず発生します。後戻りは、治療が完了した直後から始まることが多く、特に動かした歯が多い場合や、治療期間が長かった場合に顕著に現れることがあります。

なぜこのような後戻りが起こるのでしょうか?その最大の理由は、歯を支えている歯周組織(歯槽骨、歯根膜など)が、新しい位置に完全に安定するまでには時間がかかるからです。歯周組織は、矯正力によって歯が動く際に再構築されますが、治療が完了した時点ではまだ不安定な状態にあります。そのため、何もしないと元の位置に戻ろうとする力が働き、歯並びが少しずつ崩れてしまうのです。

この後戻りを防ぐために、矯正治療の最終段階として「保定期間」が設けられます。この期間に、保定装置(リテーナー)を正しく使用することが、後戻りを防ぎ、美しい歯並びを長期間維持するための鍵となります。
当院のマウスピース矯正治療費用は660,000円(税込)、月々の調整料が2,200円(税込)となっております。

後戻りをしてしまう理由

マウスピース矯正でせっかくきれいになった歯並びが、なぜ後戻りしてしまうのでしょうか。その主な理由は、矯正治療によって歯が動いた後の歯周組織の不安定さにあります。歯は、歯茎の中にある歯槽骨という骨に支えられています。矯正治療は、この歯槽骨を壊しては作り直すというサイクルを繰り返して歯を動かします。そのため、矯正治療が完了した時点では、歯はまだ新しい位置にしっかりと固定されておらず、元の位置に戻ろうとする力が強く働きます。

後戻りを引き起こす具体的な要因はいくつかあります。

  • 保定装置(リテーナー)の不使用: これが後戻りの最も大きな原因です。矯正治療後、歯を新しい位置に安定させるための保定期間には、保定装置を指示通りに装着する必要があります。この装置をサボってしまうと、歯は元の位置に戻ろうとしてしまいます。
  • 舌の癖: 舌で前歯を押し出す癖がある方や、舌が常に下の歯に触れている方は、歯に持続的な力が加わり、後戻りを引き起こす可能性があります。
  • 頬杖や横向き寝などの生活習慣: 頬杖をついたり、いつも同じ向きで寝たりする癖も、歯に偏った力をかけ、歯並びをずらす原因になります。
  • 親知らずの萌出: 矯正治療後に親知らずが生えてくると、他の歯を前方へ押し出し、歯並びを乱すことがあります。

後戻りを防ぐためには、これらの要因を理解し、保定期間中の保定装置の使用を徹底すること、そして日常の癖を見直すことが非常に重要です。

 

後戻りしてしまったら

もし、矯正治療後に後戻りが起きてしまったら、どのように対処すれば良いのでしょうか。軽度の後戻りであれば、再治療によって歯並びを元に戻すことが可能です。しかし、自己判断で放置してしまうと、後戻りがさらに進行し、再治療がより複雑になる可能性があります。

後戻りに気づいた場合は、速やかに歯科医師に相談することが最も重要です。

  • 軽度の後戻りの場合: 歯が少しずれた程度の軽度な後戻りであれば、保定装置(リテーナー)の使用時間を増やすことで、元の状態に戻る場合があります。また、後戻り専用のマウスピースで短期間の再治療を行うことも可能です。
  • 重度の後戻りの場合: 歯並びが大きく崩れてしまった場合は、改めて矯正治療を行う必要があります。この場合、ワイヤー矯正や、再度マウスピース矯正を行うことになります。治療期間や費用は、後戻りの程度によって異なります。

後戻りを防ぐことが最も重要ではありますが、万が一後戻りしてしまった場合でも、早めに気づいて対処することが大切です。後戻りを放置すると、せっかく整えた噛み合わせが崩れてしまい、肩こりや頭痛、顎関節症などの全身の不調につながる可能性もあります。

後戻りは、保定装置の使用を怠ったことや、生活習慣によるものなど、様々な原因で起こります。後戻りしてしまった理由を歯科医師とともに見直し、今後の再発を防ぐための対策を立てることも重要です。

 

当記事の監修editor

院長 宍戸孝太郎
医療法人社団 孝親会 理事長
宍戸 孝太郎
資格・所属学会
厚生労働省認定歯科医師臨床研修医指導医
SBC(Surgical Basic Course 歯周形成外科コース)インストラクター
SAC講師
club SBC
日本口腔インプラント学会認定医
日本口腔外科学会会員