歯科コラム

COLUMN

自分に合った歯ブラシを見つけましょう。見つける際のポイントについて
予防ケアについて

日々のセルフケアを大切にされている方へ

毎日の歯磨きは、お口の健康を維持するための最も基本的な習慣です。しかし、皆さんは普段、何を基準に歯ブラシを選んでいるでしょうか。「特売品だったから」「パッケージが良さそうだったから」といった理由で、深く考えずに選んでしまっているかもしれません。実は、歯ブラシは、歯並びや歯の大きさ、歯茎の状態、そしてご自身のブラッシングの癖や力加減に合わせて最適な一本を選ぶことが、汚れ(プラーク)を効率的に除去し、虫歯や歯周病を予防する上で極めて重要になります。合わない歯ブラシを使い続けることは、磨き残しが増えるだけでなく、歯茎を傷つけたり、歯を削りすぎたりする原因にもなりかねません。このページでは、なぜ自分に合った歯ブラシ選びが大切なのか、そして何を基準に選べば良いのかを、歯科医院の視点から詳しく解説します。適切な歯ブラシを見つけ、歯磨きの効果を格段に高めましょう。

なんだかこれでいいかな?で歯ブラシを決めていませんか?

多くの方が、歯ブラシを選ぶ際に「毛先が広がってきたから交換しよう」「ドラッグストアで目についたものを選ぼう」といった、消極的な理由で決めているのではないでしょうか。特に、「とりあえず標準的なもので大丈夫だろう」という考えは、効果的なセルフケアの妨げになっている可能性があります。毎日行う歯磨きが、もし効果的にプラークを除去できていなければ、時間と労力をかけているにもかかわらず、虫歯や歯周病のリスクを放置していることになってしまいます。自分に合わない歯ブラシで磨いている場合、具体的にどのような問題が生じるのかを理解し、「なんとなく」の選び方から脱却することが、お口の健康を守る第一歩です。

歯ブラシ選びで「なんとなく」が引き起こす問題

  • 磨き残しの増加:

ヘッドのサイズが大きすぎると、口の奥や歯並びの複雑な部分(親知らずの周り、矯正装置の隙間など)に毛先が届かず、プラークが残ってしまいます。特に日本人の顎のサイズを考えると、標準的な歯ブラシでは大きすぎることが多くあります。

  • 歯ぐきや歯へのダメージ:

毛先の硬さが合っていなかったり、形状が不適切だったりすると、力が入りすぎていないにもかかわらず、歯ぐきを傷つけたり、知覚過敏の原因となる歯肉退縮やエナメル質の摩耗を引き起こしたりする可能性があります。

  • モチベーションの低下:

「磨いているのにきれいにならない」「磨くたびに血が出る」といった不快感が続くと、歯磨き自体がおっくうになり、セルフケアへの意欲が低下してしまいます。自分に合った歯ブラシは、効率的に汚れを落とせるため、歯磨き後の爽快感につながり、モチベーション維持に役立ちます。

適切な歯ブラシを選ぶことは、磨き残しを減らし、ダメージを防ぎ、日々のケアを快適にするための、費用対効果の高い投資と言えます。

歯ブラシの形や毛先の質感

自分に合った歯ブラシを見つけるためには、まず歯ブラシの「頭(ヘッド)」の形と「毛先」の質感(硬さや形状)という、プラーク除去に直結する二つの要素に注目することが重要です。この二つの要素がご自身の口腔内の状況に合っているかどうかで、歯磨きの効率と快適さが劇的に変わります。市販されている歯ブラシは多種多様ですが、ここでは特に重視すべきポイントを解説します。

歯ブラシの「形」と「質感」を選ぶポイント

要素

選び方のポイント

理由と効果

ヘッドのサイズ

「小さめ」を選ぶことを推奨します。特に12本の歯を一度に磨ける程度のサイズが理想的です。

ヘッドが大きいと、口の奥の歯の裏側や、歯並びが複雑な部分に毛先が正確に届きません。小さなヘッドの方が、一点集中で丁寧に磨くことができます。

毛先の硬さ

基本は「ふつう」または「やわらかめ」を選びます。

「かため」の毛先はプラークを落とす力が強い一方で、ブラッシング圧が強い方や歯周病などで歯茎が炎症を起こしている方は、歯茎を傷つけたり、歯の摩耗を早めたりするリスクが高くなります。

毛先の形状

「平切り(フラット)」または「極細毛(テーパード)」のどちらかを目的別に使い分けます。

平切りは歯の表面や噛み合わせ面を効率よく磨くのに適しています。極細毛は、歯周ポケットや歯と歯茎の境目に毛先が入り込みやすく、歯周病予防に有効です。

ネックの細さ

ヘッドの付け根部分の「ネック」は細いものを選びましょう。

ネックが太いと、奥歯を磨く際に口を開けすぎてしまい、頬の筋肉が緊張してかえって奥まで届きにくくなります。ネックが細い方が、奥歯の磨きやすさが向上します。

ご自身の歯並び、歯茎の健康状態、そしてブラッシングの力加減を考慮し、この表を参考に、実際にいくつかの製品を試してみることをお勧めします。特に歯周病が気になる方は、「極細毛」の「やわらかめ」を意識して選ぶと良いでしょう。

持ち手の形にも注目

歯ブラシを選ぶ際、多くの方がヘッドの大きさや毛先の硬さに注目しますが、実は「持ち手(ハンドル)」の形状や太さも、効果的な歯磨きを実現するために非常に重要な要素となります。なぜなら、持ち手はブラッシングの力加減や、歯ブラシを握る「持ち方」に大きく影響するからです。不適切な持ち手は、無意識のうちに強い力をかけすぎてしまい、その結果、歯茎を傷つけたり、歯のエナメル質を削りすぎたりする「オーバーブラッシング」の原因になることがあります。ご自身が歯ブラシをどのように握る傾向があるかを知り、それに合った持ち手を選ぶことが、歯と歯茎を守るための賢い選択です。

握り方と持ち手の形状による選ぶ際の視点

  • 太くて滑りにくい持ち手:

持ち手が太い、またはラバー素材などで滑りにくい加工がされている歯ブラシは、手のひらで包み込むように握る「パームグリップ」になりやすい傾向があります。この持ち方は、全体的に力が入りやすいため、普段からブラッシング圧が強い方は、意識的に「やわらかめ」の毛先を選ぶか、後述のペングリップを意識して握る工夫が必要です。

  • 細く鉛筆のような持ち手:

持ち手が細い、またはフラットな形状の歯ブラシは、**鉛筆を持つように握る「ペングリップ」**を促します。ペングリップは、歯ブラシのコントロールがしやすく、力が入りすぎず、やさしく細かく磨くのに適しています。特に歯周ポケットや、歯と歯茎の境目を丁寧に磨きたい方、ブラッシング指導で「力を抜きなさい」と言われた経験がある方におすすめです。

持ち手は、道具を使いこなす上での「インターフェース」です。ご自身の手の大きさや、磨きたい部位へのアプローチのしやすさも考慮して、握りやすく、細かなコントロールがしやすい一本を選ぶことが、磨き残しを防ぎ、歯茎を労わる丁寧なブラッシングを可能にします。

歯ブラシ選びはぜひ当院でご相談ください。

自分に合った歯ブラシを選ぶためのポイントとして、「ヘッドの大きさ」「毛先の硬さ・形状」「持ち手の形状」について詳しく解説してきましたが、市販されている多くの種類の中から、本当にご自身の口腔内の状態に最適な一本を見つけるのは、なかなか難しいかもしれません。なぜなら、最適な歯ブラシは、歯並びや歯周病の進行度、磨き癖など、個々の状況によって細かく異なるからです。

適切な歯ブラシ選びと歯科医院の役割

  • 専門的な口腔内チェック:

歯科医院では、患者様の歯周ポケットの深さ、歯茎の炎症の有無、歯の摩耗状態などを専門的にチェックし、客観的な視点から、どの部分に汚れが残りやすいか、どの部分にダメージを与えやすいかを判断できます。

  • 磨き残しに応じた指導:

単に歯ブラシを推奨するだけでなく、実際に患者様が磨き残している箇所に合わせて、その部分に毛先をしっかり届かせるための適切な歯ブラシの選び方と使い方を、実践的なブラッシング指導と合わせてアドバイスすることができます。

  • 目的別の提案:

虫歯予防、歯周病予防、矯正治療中、知覚過敏など、目的が異なれば最適な歯ブラシも異なります。現在の課題を解決するための、最も効果的な歯ブラシの種類を明確に提案することが可能です。

ご自身の歯磨きの効果を最大限に高め、歯と歯茎を健康に保つためには、定期的な歯科検診とプロによる専門的なアドバイスが非常に有効です。この情報を参考に、ご自宅でのセルフケアをさらに充実させてください。

 

当記事の監修editor

院長 宍戸孝太郎
医療法人社団 孝親会 理事長
宍戸 孝太郎
資格・所属学会
厚生労働省認定歯科医師臨床研修医指導医
SBC(Surgical Basic Course 歯周形成外科コース)インストラクター
SAC講師
club SBC
日本口腔インプラント学会認定医
日本口腔外科学会会員